いまこそ緊縮財政を捨て積極財政に

いまこそ緊縮財政を捨て積極財政に

プライマリーバランス黒字化目標を撤廃して、財政出動を増やしてデフレを脱却できるのです。日本は通貨発行権を持つ主権通貨国だからです。消費税は廃止できます。

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MMT(現代貨幣理論)を批判する者

藤井聡先生と三橋貴明氏が準備され、令和元年7月16日、ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授が来日しました。衆議院第一議員会館で開催されたMMT国際シンポジウムで講演したことが新聞やテレビでとりあげられ、話題となりました。

 

ステファニー・ケルトン教授を批判する者たち

すると、さかんにリフレ派経済学者やリフレ派経済評論家などがMMT理論の批判を繰り広げるようになりました。そのほぼすべてが、間違いだらけの「MMT批判」です。ケルトン教授は米国の大統領候補であったバーニー・サンダース上院議員の経済顧問です。MMT(現代貨幣理論)はアメリカでも主流派経済学者がこぞって批判する状態です。MMTと主流派経済学は、いわば天動説と地動説のような関係にあり、今、まさにパラダイム転換が行われようとしているのです。この本でMMTがよくわかります。

 

京都大学レジリエンス実践ユニット

MMT研究を進める京都大学の藤井聡教授がケルトン教授を招聘し、そのシンポジウム、記者会見の様子は、テレビ、新聞でも報道されました。ケルトン教授が提唱するMMTは、プライマリーバランスのような人工的な基準ではなく、インフレ率を基準として、政府の支出を増やしたり減らしたりできると教える経済理論です。通貨発行できる自国通貨を持つ政府が、自国通貨建ての国債をどれだけ発行しても、それで破綻することはありえないと明確に説いています。

 

現代国家における貨幣は、政府が自ら作り出すもの

MMTは、日本やアメリカやイギリス、オーストラリアなど自ら作り出す貨幣(自国通貨)を持つ国の場合、自国通貨での借り入れで、『破綻』することなどあり得ないという事実に着目しています。政府には「最後の貸し手」である中央銀行が存在することは紛れもない事実です。そして、中央銀行は政府の子会社の立場にあるため、国債についての債務不履行すなわち破綻(デフォルト)になることはありえません。これは、事実であり、理論以前の問題です。日本でも、日本政府は通貨を発行できるので、自国通貨建ての国債という借金が返せないことなどありえないのです。ギリシャのように自国通貨の発行ができない国と日本やアメリカのような国はまるで事情は違うのです。

 

通貨発行権のある国で財政赤字や累積債務は問題ではない

MMTはこの事実に基づいて、インフレ率が2%あるいは3%程度の適正な水準になることを目指して、政府支出を増やしたり減らしたり調整すればよいと提言しています。たとえば、インフレ率が高すぎる国では、財政赤字を縮小させるように緊縮財政を実施し、増税したり、政府支出を削減します。その反対に、デフレの状況にある場合は、財政支出を増大させて、政府が防災インフラを主にインフラを拡充し、積極財政を実践して、国民の仕事を増やし、お金を国民に支払って豊かにするのです。その際、国債発行によって政府の借金が増えることは、そのまま国民の資産が増えることになります。ですから、日本においては、いまは増税ではなく減税が必要であり、政府はどんどん財政出動すべきなのです。

 

主流派の経済学は財政赤字を縮小することしか頭にない

これまでの日本政府は、財政赤字がある限り、経済がどんな状況であって消費増税や歳出カットが不可欠なのだという姿勢で緊縮財政を続けてきました。この結果、デフレがますます進んで、国民の貧困化が進みました。この二十年、国民の実質賃金が下がり続け、国民の所得は下がり続けたのです。この流れを支持してきた主流派経済学者たちは、的外れなMMT批判をしています。そして、多くのMMT批判は、現実の貨幣流通の仕組みについての誤解や理解不足に基づいてなされているのです。

 

MMTについての明らかな理解不足や誤解

「MMTがもてはやされるのは消費税の増税や財政再建をしないで済むようにしたいからだ」と、説いている学者もいます。「貨幣の保有動機に課税がある以上、いずれ増税があることが前提になる」という明らかな間違いを主張する経済学者もいます。そんな前提は一切ないのにです。国債の赤字が増えるとハイパーインフレになると脅す経済学者もいますが、MMTは、インフレ率が2〜4%程度に収まるように、財政支出を増やしたり減らしたりします。また、税も上げたり下げたり調整していきます。ですから、過度のインフレが起きるはずもないのです。むしろデフレから適度に脱却でき、国民は豊かになるのです。

 

徴税制度は財政収支(貨幣供給量)を調整するもの

財政収支は徴税制度だけで決まるわけはなく、財政支出の増減でも調整されます。財政出動とは貨幣供給のことであり、政府の赤字は国民の黒字なのです。財政収支が徴税制度だけで決まることを前提としたMMT批判は完全に間違っています。「MMTによれば、政府が財政収支を気にしなくてよいのは、その気になればいつでも増税できるからだ」という批判も多いですが、これこそ明らかな間違いです。MMTが、インフレ率の調整を徴税制度のみで行うわけがなく、財政出動する量の増減でも調整できるのです。今のようなデフレの日本では毎年二十兆円ぐらい財政出動をやって防災インフラをまず充実させるべきなのです。

 

MMTは経済成長を生み出す方法論

「MMTは高い成長を見込んでいるわけではない。」とか「自然増収ではなく増税なしには貨幣を回収できない」という批判も明らかに間違いです。増税しなくても、支出を削減するだけで、財政収支を黒字化して、回収できます。MMTを理解し、デフレ経済の状況では、国債発行して財政出動をして、防災インフラやメガトン級タンカーの港や、教育、福祉に支出をすれば、デフレを脱却することでき、結果的に、税収は10兆円、20兆円規模で拡大するのです。そもそも、赤字の国債残高が増えることは、それが自国通貨建て国債である限り、何の問題もありません。通貨発行できる政府はいつでもその借金を返せるのですから当然です。

 

MMTについての明らかな事実誤認

「MMTは課税を貨幣(タンス預金)の回収とみなすが、回収の仕方に配慮がないようだ。仮に消費税や所得税でもって課税するなら、景気や成長に与える影響は甚大だろう」という批判も目にします。しかし、そもそもデフレの状態では、MMTなら、消費税は減税するし、所得税も増税しません。デフレを脱却してインフレ率が3パーセントぐらいになってきたら、初めて、増税を検討するかもしれませんが、今はデフレなのです。まったくインフレになってないのです。この状況では財政出動をして、減税をすべきであり、消費増税はまったく間違っています。

 

徴税制度によるビルトインスタビライザー(自動調整)機能

MMTを実践すれば、実質的税率が、不況下では自動的に下がり、好況下では自動的に上がるのです。MMTほど、インフレに対応できる理論はないのです。そしてMMTほどデフレを脱却できる理論はないのです。「MMTが目指すのは脱デフレではない」と批判する人もいますが、MMTほどデフレ脱却ができる方法論は存在しません。「MMTは政府が主導する(慢性的な需要不足を埋め合わせる)経済の再構築、いわば『大きな政府』を目指している」という批判もありますが、これも事実と違います。大きい政府か小さい政府かという問題ではないからです。国民が豊かになるかどうかがすべてです。実質賃金が上がることが重要なのです。そのための政府支出の増大なのです。

 

MMTはインフレ率の適正化が重要な政策目標

MMTは、デフレの国家に対しては、デフレ脱却を目指すのです。それは財政出動によって成し遂げるのです。同時に減税によって成し遂げるのです。赤字の国債をどれだけ発行しても、金利は下がり続けてきたのがこの二十年の日本の歴史です。そして、政府の赤字は国民の黒字なのです。国債残高とは政府の貨幣発行量の記録にすぎません。デフレの国では、政府が国債を発行して、国内に仕事を増やし、貨幣供給を行うことでデフレから脱却ができるのです。政府が国内に貨幣供給をしていく手段が財政出動であり、防災インフラや道路網、鉄道網、エネルギー安全保障、水の安全保障つまり水道の整備です。これらを政府の支出でやらねばなりません。

 

上念司も大前研一も根本的に間違っている

上念氏は、個人の競争力を高めることが経済成長につながると説き、MMTによって政府が防災インフラを拡充したり、新幹線網を拡充したり、高速道路を拡充したり、原発の安全性を高めて稼働させたりすることにお金を使うことを、まるで計画経済は悪といわんばかりに批判しています。国際リニアコライダーにも反対なのでしょう。しかし、インフラの整備は、国が主導して行わねば、個人や民間がめちゃくちゃに実行すると混乱するばかりです。鉄道網や道路網やエネルギー安全保障は政府主導でするのが国家の安全保障の基本です。大前氏は、MMTの批判の記事で、日銀が国債を保有することをリスクであると説いています。政府と日銀は親会社と子会社の関係にあり、日銀は事実上政府と連結決算される関係であって、日銀が国債を買い取ることは事実上、借金が消えたことにほかなりません。こんな簡単な事実もご存知ないようです。


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